第6章 昼はひねもす夜は夜もすがら(宮侑)
「ってことは、鮭のおにぎりが好きなんかな?俺は」
「何気なくそれを選んじゃうってことは、好きなのかもね」
「へー」口を尖らせてゴミを片づけていた侑は、「あ、今気付いたんやけど」と発した。
「うん」
「休みの日って何でもできるやん?」
「映画でも読書でもハイキングでも」コロコロと話が飛ぶな?と思いながら私は相づちを返して、豆乳を飲む。
「何でもできる」
「よりどりみどり」
「でも何となく琴葉に電話しちゃうのって、俺は琴葉のことが好きなんかな?」
ストローがずず、と音を立てた。
「なぁ、どう思う?」
私のいるほうに体重を傾けて、侑が大きな瞳を向けてくる。「お疲れさまでーす」と交わす声が後ろから聞こえてきた。シフトが交代の時間なのか、レジに女の人が立っている。さっき会計をしてくれた眠そうな様子の男の店員はスタッフルームへ引っ込んでいく。その背中を見送りながら、「私がひとつ、言うとしたらな」と口を開いた。
「コンビニのイートインコーナーでおにぎり食べながらする質問ではないな」
「あ、せやなー」軽やかに笑う侑の声が、頭の上で弾んだ。