第6章 昼はひねもす夜は夜もすがら(宮侑)
侑は大きな口を開けておにぎりを頬張る。「ところで、その豆乳シリーズ、めっちゃいろんな味の商品出してるよな」と唐突に話を戻した。
「せやな。30種類以上あるらしいで」
「豆乳だけで?ヤバいな」
「よりどりみどりやろ?」
「でも琴葉はいつも紅茶味やな」
「そういう侑も鮭おにぎりやん。いつも」
「え?」きょとんとした顔で侑が動きを止める。ほとんど食べられたおにぎりから、淡い色の具が見えていた。
「めっちゃ高確率やで」
「考えたことなかったわ」
言われてみれば確かに。と侑は口をモグモグと動かしながら、破いた包装を見て納得するように頷いた。「安定ってやつやな」
「飯選び放題のコンビニなのに」私はすかさず皮肉を言ったけれど、侑は昔の発言は覚えていないのか、「他に美味しそうなのはいっぱいあるけど、つい買ってしまうよな?」と同意を求めてきた。
「まぁ、無意識に選んでしまう気持ちは分かるよ」
私はストローをくわえながら、視線を落として自分のスニーカーを見た。別に大のお気に入りってわけでもないはずなのに、なぜかいつも手にとってしまう。そういうのって意外に多い。