第6章 昼はひねもす夜は夜もすがら(宮侑)
鮭に続いて2個目のおにぎりも平らげた侑は、「これは家で食べる分」とソーセージの挟まったパンを両手で持った。「ところで、今日どうするん?」
「何が?」質問に心当たりがなかった。
「予定とか」
「何もないけど」さっき電話で同じやりとりをしなかっただろうか、とふと考える。
「俺も俺も。今日なんもないねん」
「……どっか行く?」
言ってから自分で少し驚いた。私から誘うことってなかなかない。侑は大きな口元に嬉しさを滲ませて、満足そうな顔をしていた。ほら、やっぱりコンビニだったやろ。と言っていた小学生の時みたいに。
「行きたいなぁ、どっかに」
「どこ行く?」
「映画でも読書でもハイキングでも」
「読書は嫌やな」
「じゃあとりあえず外に出ような」決まり!と言って侑が立ち上がる。「10時に、駅集合で」
「待ち合わせ、な」ストローの先を指で押して、紙パックの中に入れ込みながら私は呟いていた。
コンビニの外に出て、「家帰ったあと二度寝したらアカンで」と真面目に忠告してくる侑と一旦別れた。各々の家へと向かう。太陽は更に高くなっていた。日焼け止め塗らないとあかんな、と考えながら、私は数時間後の自分たちの姿を想像してみる。私も侑もバッチリお洒落して、2人で並んで歩くのだ。今度はピカピカの靴を選んで。所詮何を履いたって私は私なのだけど。
『昼はひねもす夜は夜もすがら』