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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第6章 昼はひねもす夜は夜もすがら(宮侑)




 今日が平日だったなら、通勤ラッシュ前の空いた電車で学校へ向かえるようなお得な時間。太陽はすでに昇っているけど空気はひんやりと腕に吸い付いてくる。

 私よりも一足早くコンビニの軒下へやってきていた侑は、ゆるゆるの部屋着と素足に便所サンダルといった格好だった。眠そうな様子は無かったけれど、私を見るなり「すっぴん~」と指を向けて笑った表情は締まりがなく、何だかふにゃふにゃしていた。筋肉バカの身体まで柔らかい感触になってたらいいのにな、と確かめるように私は侑を肘でつつきながら文句を言った。


「いい加減な、休みの朝に私に電話入れんのやめてよ」

「だって治が寝てて暇なんやもん」

「私も寝とるって。起きとるのはお前だけや」

「琴葉は起きとったやん」

「侑の電話で起こされたんだって」


 言い合いながら自動ドアをくぐる。朝も早いのに店内にお客さんはチラホラといて、トレンチコートの社会人らしきお姉さん、散歩帰りなのか惣菜パンのコーナーをのんびりと眺めるおじいさん、買ったものを食べられるイートインコーナーには音楽を聴きながらコーヒーを飲んでいる大学生っぽい男の人の姿、などなど色々。

  そしていかにも「ぼくたち近所に住んでます!」と言わなくてもわかるくらい、気の抜けた部屋着の私と侑。どんな人にも平等に商品は並べられているのだから、コンビニという世界は優しい。


 そろそろ夜勤の終わる時間なのだろうか、男性の店員さんが表情の乏しい顔で「いらっしゃいませー」と接客していた。そのレジの手前に貼られている、1枚の手書きの張り紙が私の目に止まった。品出しされたばかりの、ぎゅっと棚に並べられたおにぎりを見ていた侑に「ねえ、あれ見て」と声をかける。


「このコンビニ、もうすぐ10周年らしいで」

 張り紙には、おかげさまで、とか、いつもありがとうございます、といった筆文字が紙の上で躍っていた。隅には「店長」の署名入り。文字だけでイラストはなく、ポスターというよりもお触れ書きのようでもある。侑は「へー」と興味無さそうに返事をした後、私の指さす方へ視線を向けて「店長、達筆やな。居酒屋のメニューみたいやん!」と突っ込んだ。

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