第4章 縦に線(菅原孝支)
同じ制服を着ている私たちは 、もうじきバラバラに分かれていく。 毎日顔を会わせていたのに、 おはようすら交わせなくなる。分かってる。
毎日顔を見れなくなっちゃう。声を聞けなくなっちゃう。楽しそうにハイタッチする菅原の姿が見れなくなっちゃう。 分かってる。でも続く体育館の床板の輝きを見ていると、そんな日は永遠に来ないんじゃないかとも思う。
「ずっと高校生でいれたらいいのに」
「永遠の17歳やね」
[いっそ、皆で留年しちゃおうか」
「いいね」
「せーのでみんな一緒に留年」
本気でもない嘘をついて笑った。
旅立つ日は決まっている。だけど変わらずみんなで笑いあっている。 ずっとこんな日が続けばいい、は無理なお願いだとしても、せめて、この日々のことは忘れたくない。と私は思った。友達と笑ったこと、片想いしていた人と同じ教室で過ごせたこと。