• テキストサイズ

世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第1章 恋とウイルス(縁下力)





「それは、作業が早くなるんですか」
 
「やってみてダメだったら、戻せばいい」
 
「………………わかりました」
 
 
 先輩の指示通り、わたしは紙をまとめる専門になった。それを先輩がホチキスで止めていく。パチン、パチン、パチン。
 
 
 結果は圧倒的だった。紙をめくる音、ホチキスの音。作業にリズムが生まれ、出来上がりの山はどんどん高くなっていく。すごい、これは、
 
 
「産業革命……!」
 
 
 思わず口にすると、縁下先輩が手を止めた。様子を伺うと、先輩は小さく声を出して笑っていた。ツボに入ったのか、肩をふるわせている。
 
 
「桐谷さんて、面白いね」
 
 
 どうやら口もとの緩みを抑えられないらしい。あぁ、と思う。今なら、
 
 
 
 柔らかくなった空気が、わたしの背中を押した。
  
 
 
 今なら、ちゃんと謝れるかもしれない。
 
 わたしは俯いて、この1ヶ月間を思い出す。
 



  わたしと縁下先輩の出会いは、4月のはじめ。保健委員の顔合わせの時だった。
 
 
 忙しい高校生活の中、地味な委員会活動にやる気が出るわけもなく、おそらくわたし以外のメンバーも、クラスのじゃんけんやくじで運悪く選ばれたのだろう。集まった最初から、だるい雰囲気が教室内に漂っていた。まとめ役は保健体育の先生で、委員会の活動内容を説明した後、簡単な自己紹介をするようわたしたちを促した。
 
 
「1年1組、桐谷琴葉です。よろしくお願いします」
 
 
 トップバッターに指名され、 さっと終わらせたわたしは、上級生の観察に勤しんだ。
 
 面倒なことには、楽しみをひとつ作れば良い、と考えているわたしである。学校も塾もアルバイト先のコンビニにも、そして不本意で選ばれた委員会でも、お気に入りの人が男女問わずひとりでもいると、苦痛な時間も楽しみに変わるものだ。身の回りの素敵な人から、好物の赤いイチゴを丸ごと1パック プレゼントしてもらう場面を妄想して過ごすのが、わたしなりの現実逃避のやり方だった。
 




/ 89ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp