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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第4章 縦に線(菅原孝支)






 現実や、目標や、将来について考えなくては、 とわかっているのに、 いつの間にか思考は別の世界へと切り替わるものだった。 お風呂の中で、机の前で、ベッドの上で。ぼーっとしている自分に気がつく度に、焦りにも似た感情を覚えた。 受験はもうすぐだった。 何を中学生みたいなことをやっているんだろう。 と思いながら、また白昼夢を見る。ザッピング的に菅原の姿が浮かぶ。辛くなる。
 
 
 やらなきゃいけないことはある。何をするべきかは決まってる。
 音の無い映画のように過ぎ去る日々で、色々な言い訳を重ねているうち、今日も黒板の文字は消されていった。
 
 
 
 


 
「だって京都の大学だよ!?きょ、う、と!宮城からどんだけ離れてると思ってるわけ!?」
 
 取り乱している七海を間に挟み、私と果歩ちゃんは体育座りで彼女の話を聞いていた。
 
 
「この時期に付き合いはじめて。なのに違う大学に行きたいとか。なに考えてあたしに告白したんだろ」
 
 
 ね、そうだね、何考えてたんだろうね。と当たり障りない相槌を打ち、私はバトミントンのラケットを手の上で転がした。
 
 
 あの日に菅原や私たちが、ほっこりするねぇ、なんて言って見守っていた中庭の二人は、実は深刻な話し合いをしていた最中だったという事実を、その日の午後には七海の口から聞かされた。縁がなくて知らなかったが、最近志望校の距離が理由で揉めるカップルが学年のあちこちにいるらしい。
 
 悲しい話やねぇ、と果歩ちゃんが言う。そうだね、悲しいね、難しいね、と私が続く。いま私たちがしてあげるべきなのは、的確なアドバイスなんかじゃなかった。
 
 
 体育館の壁際に座る私たちの前を、バスケットボールを入れたモルテンの青いボールカゴが、ガラガラと通り過ぎた。
 

 
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