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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第4章 縦に線(菅原孝支)




 
 いつから好きになっていたのか分からない。ただ、片想いの気持ちを歌った音楽を聴きながら、菅原のことを思い出している自分に気がついたとき、これが恋なのかもしれないと悟った。
 
 証明づけるものならたくさんあった。
 
 
 数学の授業中に、その曲がずっと頭の中で流れていた。ノートの端に小さな文字で、歌詞を薄く書いた。教室で一番後ろの自分の席から、菅原を見ていた。黒板に向かって座る、彼の後ろ姿には正しさが漂っていた。
 
 
 
 先生が「菅原」と問題を当てる声に、なぜか私の心臓が止まりそうになる。
 
 
 返事をして立ち上がった彼は、黒板に向かって歩く。まだ新しいチョークを手に取り、スーっと白い曲線を引く。 ゆるいN字型をした、3次関数のグラフ。 誰かの呼吸みたいに静かで、丁寧さが伝わった。 少し傾いた座標軸まで、全部真似てやろうと私はノートに書き写す。
 
 
 
 毎日毎日、何度も思う。
 やっぱり好きだ。
 身体を丸めて消えてしまいたくなるくらい、好きだった。
 
 
 もしも付き合えたら、と考えて、また辛くなる。あの綺麗な視線がまとわりつくと考えると苦しくて、耐えられる気がしなかった。自分のものにできるなんて、 おこがましいとさえ思う。 でも、 もしかしたら。 ひょっとしたら。 そんな想像を膨らませているうちに、 夕焼けの中でひとり信号待ちをしている自分に気がついたりする。
 
 学校のすぐ側にある交差点は、いつも赤信号が長かった。横断歩道を渡った先には公園がある。てんとう虫を模したドーム型の遊具で遊ぶ子供達の声が、夕焼けこやけの放送に被さって耳に届いた。
 
 
 
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