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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第4章 縦に線(菅原孝支)





「別にええんやよ、琴葉ちゃんは琴葉ちゃんの行きたいところへ行けば」背の低い果歩ちゃんは、頼れる妹のようである。
 
「行きたいところがない時はどうすればいい?」すがる思いで私は尋ねる。
 
「ほんなら日本列島ダーツの旅みたいにさ、適当に投げて当たったところに住んだらええやん」

 
 さすが。転勤族であちこち動いた子は言うことが違う。不思議な方言で喋るこの果歩ちゃんと、私と、あともう一人。大人っぽい見た目の七海を入れたら、私たちはいつもの3人グループになる。七海は美人のタイプだけれど、小さい頃から『七つの海を渡るほどビッグな人間になれ』と親から言われて育ったらしく、その願い通り、どうしても用事があるから昼休みだけ日直の仕事を代わってくれと言うなり私たちの返事も待たずに教室から豪快に出て行った。私が大慌てで適当な大学名を記入している間、果歩ちゃんはクラスのみんなから借金取りのようにプリントを回収して集めてまわった。そして担任の元へ運ぶ今に至るというわけだった。
 
 
「あぁもう、みんなの未来が重いよ」
 プライバシー保護のために裏返しで集めたプリントたちを見下ろして私は恨み言を口にする。「このままこの3階の窓から、秋風に乗せてばらまいてやりたい」
 

「ええなぁ、それ」
 果歩ちゃんが適当に調子を合わせる。「秋空に紙切れが高く舞う光景。綺麗やろうね」と薄く広がる雲に目を細めている。
 


 秋が過ぎれば、今年の年の瀬が見えてくる。つまり受験がさしせまっており、これからやってくる冬が終わりを告げる頃には、私たちはこの学舎から飛び立って行かなければならない。でもどうしたって、学校に追い出される気分にしかなれなかった。自分はずっと、高校生のままでいるとおもっているからかもしれない。
 
 


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