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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第4章 縦に線(菅原孝支)



 
 
「重い...」
 
 職員室へと続く廊下を歩きながら、私は泣き言を口にする。手に持つのは日直の仕事で集めたクラスみんなの進路志望調査表。行きたい大学名と学部が第三希望まで書き込まれている。うなだれる私の顔を、隣を歩く果歩ちゃんが不思議そうに覗き込んでくる。
 

「琴葉ちゃん、何がそんなに重いん?ただの紙の束やないの」
 
「将来のことを考えると気が重いんだよ、果歩ちゃん」
 
「ほーなるほど、うまいこと言うね」
 

 のんきに感心する果歩ちゃんは、つるんとしたショートカットが似合う低身長女子だ。『果てしなく人生を歩いてゆきなさい』と親に願われて名を授かった彼女は、従っていつもマイペースである。その横で、晴らしどころのない気持ちを抱えて歩くのが私。
 

 私の進路志望欄は、ついさっきまで真っ白だった。提出日を忘れていたわけじゃない。行きたいところが無くて、ずっと書けなかったのだ。締め切りなんてなかったら、永遠に埋められないでいたに違いない。
 

 冴え渡る秋空を横目にため息を吐く。溢れんばかりだった蝉時雨は虫の声に移り変わり、濃い青に湧き上がる入道雲は今では薄い羊雲。永遠に続くとさえ思われた夏の暑さも、夢のように消えてしまった。高校3年の秋。制服の夏服だってもう一生着れない。
 
 
 
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