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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第1章 恋とウイルス(縁下力)


 
 
 
「縁下先輩!!」
 
 
 
 翌日の放課後、意気揚々と2年生の廊下まで乗り込んで、気付いたことがある。わたしは先輩の教室が何処にあるのか知らない。進学クラスだということは聞いているから、4組か5組であることは検討が付く。
 
 順番に覗いて、先輩の姿を探そうか、と迷っていたところ、親切にも声をかけてくれた人がいた。
 
 
「お、2年になんか用事か?」
 
 坊主頭で鋭い目付きのその人は、白い半袖のシャツの両袖をたくし上げ、いかにも運動部らしい風貌だった。パッとわたしに話しかけた後、何かに気がついたように一歩下がる様子は、反射的に動くチーターを思わせた。
 
 
「誰か探してんなら、俺が呼んでくるぜ!」
 
「ありがとうございます、とある先輩に話があって」
 
「名前は?」
 
「縁下さん、という人です」
 
「縁下力?」
 
「ご存じですか」
 
 
 おうよ!と元気に答えたその人は、「俺、あいつと同じ部活だから・・・」と言いかけて、まじまじとわたしを見た。わたしの顔を見て、わたしの靴紐の色を確認し、またわたしの顔を見る。
 
「用事?」
 
「はい」
 
「縁下に?」
 
「はい」
 
「・・・1年の女子が、縁下に、用事・・・?」
 
 ひと言ずつ声が曇っていく。
 
 
「あ、委員会の話です」
 
「だよな!!!? 」
 
「ところで、どうしてそんなにわたしから離れているのですか」
 
 
 話題をそらすために尋ねると、間合いが遠いその人は、懐かしむような目をして言った。
 
「先月、校内で迷子になってた1年女子に話しかけたら、驚いて泣かれてしまってな」
 
「なるほど」
 
 
  
 案内された教室に、縁下先輩はいた。窓際後方の席に座り、鞄に荷物を入れているところであった。テスト期間中に髪を切ったのだろう。えり足が短く、うなじが以前より露出されている。とんとん、とノートと教科書の角を揃える先輩の周りには、いつかの時のようなさらさらとした空気が漂っていた。窓の外の光が逆光となり、眩しくて、わたしは目を細めた。
 
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