ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第3章 お風呂
「リヒ様。今日学校でちょっと気になるコウモリを見たのですが…。」
マキアはバスルームのカーテン越しに、リヒ様に声をかけた。
「…ん~?なに?」
「なっキャァー!ちょっ!出て来なくていいですよっ!」
マキアはカーテンを開け、
バスルームから出てきたリヒ様を見て悲鳴を上げた。
くるっと背を向け真っ赤になった。
「アハハ、マキアはカワイィなぁ~。
大丈夫だよ。今私は子供の姿だ。」
リヒ様は右手に持ったアヒルを押して、
ピュ~っと音を鳴らした。
「っもぅ!そーゆー問題じゃないです!
リヒ様は一応伯爵様なんですから、
女性の前にそんな格好で出て来ないで下さいよっ!」
マキアは後ろを向いたまま耳まで赤くして怒鳴った。
「え~?
でもマキアは私のブラッディ・ローズだから、
淑女とは違うよ?
私が体を洗えと言えば洗わなくちゃいけないし、
服を着させろと言えば着させるんだよ?」
マキアはハタッと気が付いた。
その通りだ。
私はメイド。
淑女なんかじゃない。
ご主人様の命令は絶対。
「…申し訳ございませんでした。」
マキアはしゅんとして振り向こうとしたら、
後ろから手が伸びてきた。
「ひゃっ」
「それに…」
その手は大人の男の手で、
少し筋肉質な腕が、後ろからマキアを抱きすくめた。
石けんの香りが、湯気と一緒にふわりと舞う。
「私がベッドに来いと言ったら来るんだよ?
…エミリちゃんみたいに…」
その声も大人の男の声で、
美声と呼ばれる甘い声だった。
耳元で囁くリヒ様の声に、
マキアは全身が熱くなって鳥肌が立った。