ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第13章 初めての夜は
「話を戻すけどね、私は永久中立なんだよ。
すべてのドラキュラの味方だし、敵だ。
好きな子は助けるし、嫌いな子とは接触しない。」
真っ直ぐな視線で言い放つ姿に、
ハートランドの目は釘付けになった。
「そんな、考えをするドラキュラがいるんだな…
全てのドラキュラはディクシー派かネル派で、
それが古くからの慣しなのだと思っていたよ。」
ハートランドはカーディナルの手をそっと握った。
「別にどっちに付いていたっていいんじゃない?付きたければ。」
心底どうでも良いように言い放ち、溜め息をついてみせる。
「はは、本当に君は不思議なドラキュラだよ。」
ハートランドはようやく笑顔を見せた。
「君と知り合えたことに感謝するよ。
なんだか社交界よりも楽しい話が出来そうだ。」
ハートランドは太陽のように微笑んだ。
「それはどうも。でもこの私を、
社交界の奴らと一緒にしてもらいたくはないね。」
苛立ちの溜め息を吐く彼の様子に、
ハートランドは吹き出して笑った。
「ねぇ?そんなことよりさ。」
彼はベッドの縁に腰を下ろすと、
上目遣いでハートランドを見上げた。
「まったく、彼女をどれだけ食い散らかしたの?」
「!!…その言い方はやめろ!」
ハートランドの頬は一気に高揚し、
焦りの声が上がった。
「クスクス。じゃあどれだけ愛したの?」
紫水晶の瞳が、いたずらっ子のように笑む。
「…途中から記憶がない。」
ハートランドは絞り出すように呟いた。
「ハハ、若いね。
映像で記録でもしておけば良かったんじゃないの?」
彼は妖艶な笑みをたたえて、からかうように笑った。
「!!伯爵!君は天才か!」
そんな彼の言葉に、一瞬目を見開いて、
ハートランドは歓喜の声を上げた。
「…君は、本当に馬鹿なの?」
ハートランドの無垢な若さに、
心底呆れた声が出た。