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ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜

第13章  初めての夜は




ーハートランド回想ー


伯爵とマキアちゃんが帰ると、
カーディナルは少し頬を染めて、
いそいそと片付けをし始めた。


「…カーディナル…」


「…!」


ガシャン

カーディナルはビクッと肩を震わすと、
お皿を落としてしまった。


「も…申し訳ございません…」


普段なら絶対しないミス。
彼女が極度に緊張しているかドキドキしているのが、
遠目からでも伝わって来た。


「何を考えているのかな?」


「!…」


カーディナルはこちらを向くと、
熱っぽい目で見つめて来た。
無言で。


「カーディナル…それは反則だよ…。」


僕は溜め息をついて、顔を手で覆った。
頬が熱い。きっと真っ赤だ。


「仕事が終わったら、部屋に来て。」


「!!…承知…いたしました…」


彼女の声は少し震えていた。
きっと僕の言葉の意味するところを察して、困惑したのだろう。
でも僕だって限界だった。
このままここにいると、彼女を乱暴に襲ってしまいそうな衝動に駆られる。
僕はすぐに席を起ち、自室へ向かった。


マキアちゃんが代弁してくれた、カーディナルの本心。

“私の血も飲んでほしいです”

それは僕に喜びと衝撃を与えた。
感極まるくらい嬉しかった。
けれども同時に、恐ろしい程の興奮を感じた。

彼女の首筋は、どんな香りがするのか。
彼女の肌にこの牙を突き刺したら、どんな味がするのか。
そしてその時彼女は、どんな声で鳴くのか…。

考えただけで意識が朦朧として来そうだ。



部屋に着くと、とりあえず部屋着に着替えた。
ベッドの端に腰掛けてみたものの、なんだか落ち着かない。
彼女を待つ時間がこんなにも気持ちを掻き乱すものだとは、
思いもよらなかった。


「そうだ!彼女との初めての夜だ。
ロマンチックに彩らないと…!」


僕は使命感にかかれ、部屋の中を動き回った。

床には良い香りのする薔薇の花びらを撒いた。
アロマキャンドルもつけた。
上品な音楽も流そうかとも思ったが、
彼女の声を何にも邪魔されたくなかったのでやめた。


「他にはないかな…。うん、よし。」


独り言を呟いて、窓の外を見上げた。
美しい月明かりが僕の顔を照らした。
今夜は細い三日月だ。
まるでカーディナルのようだと思いふっと笑みがこぼれた。


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