ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第13章 初めての夜は
静かにシーツを剥がすと、
真っ白な体に赤黒い穴がいくつも開いていた。
まごう事なき牙を刺した跡。
出血はしていない。
穴の表面が少し固まっていた。
血が出ないように処置したのか、
または出る血がもう無いのか。
多分後者に近いのだろう。
「舐めて。穴。」
彼は真顔でハートランドを見た。
「…は?」
「変な声出さないでよ。
私が舐めても良いのかい?」
「!!」
舐めろ。と言うのはつまり、
ドラキュラに与えられた力で傷口を治せということだ。
一応自分がやってしまうと、
ハートランドが発狂する可能性を考慮した。
「早く。」
ハートランドは言われるがままに、
カーディナルの身体に舌を這わせて行った。
みるみるうちに傷口は消えていく。
綺麗になっていく身体が、余計にマネキンのように見せていった。
「よし。じゃこれ飲ませて」
彼はハートランドの前に、
白いカプセルを1つと、赤いカプセルを2つ出した。
「?」
「早く。
助けて欲しいんでしょ?」
小首を傾げて見下ろす様子がなんとも傲慢で、
平伏したくなる妖艶さを含んでいた。
「…あ…」
ハートランドは暫し見惚れ、
そしてどう飲ませたら良いのかあたふたと水を探し始めた。
「…はぁ。君は馬鹿なの?
口移しで入れれば?」
ため息をついて顔の半分を覆う。
「あっ…」
叱られている気分になって、
ハートランドは急いでカーディナルの頭を持ち上げると薬を口に含み、
口移しで流し込んだ。