ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第12章 メイド心の変化
「全然違いますよ!!…!…つっ。」
マキアは大声を出すと、こめかみに人差し指と中指をあてて呻いた。
「貧血なんだから興奮しないの。」
リヒ様はクスッと笑って、マキアの頭を撫でる。
「“あの時”私は、マキアのギリギリまで血を吸ってしまったんだから。」
リヒ様はマキアの髪を一束掬うと、愛しそうに眺めながら落とした。
「ごめんね。我慢できなかった。」
「!!」
リヒ様は少ししょんぼりとした目をして、マキアを見つめながら言った。
耳がついていたら垂れ下がっていそうだ。
なんて可愛らしい…。
「いえ…そんな…。」
マキアは可愛さに、胸がキュンと締め付けられる。
「“あの時”のマキアが可愛い過ぎたから…。
今思い出しても、体が反応してしまいそうになる…。」
リヒ様はマキアの唇に人差し指をあてて滑らせた。
「!!」
マキアはぴくっと肩を揺らして、目を見開いた。
「あ…“あの時”って、その…“どこまで”…?」
マキアは記憶を必死に呼び起こしていた。
貧血で脳に血が回っていないからか、リヒ様の“力”のせいか、
なんとも曖昧になっている。
「どこまで覚えているの?」
リヒ様は試すように目を細めた。
妖艶な目つき。
「どこって…、馬車で血を吸われて…その…後…私…!」
少しずつ鮮明になっていく記憶は、どれも恥ずかしいことこの上なくて、
ひとつも言葉にできなかった。
「…クスっ。可愛かったよ。」
「!!」
マキアが考えていることは全てお見通しとでも言うように、
リヒ様は色っぽい声で囁いた。
「どこが一番可愛かったか、教えて欲しい?」
リヒ様はマキアの頬に自分の右手を添えると、挑発的に囁いた。