ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第10章 愛の形
「僕は怖かったんだよ。血を吸って彼女に嫌われてしまう事が…。
だって…止められる自信がないから…。」
ハートランド様は悲しそうに、そして恥ずかしそうに笑った。
「…その気持ちはわかるよ、ハートランド。
私も今日は止められそうにないな…。」
リヒ様は獰猛な目で私を見た。
「!!!」
心臓が激しい音を立てて、一気に全身に血を巡らせる。
「そんな期待した目で見ないでよ。マキア?」
「みみみ…見てません!」
私の声は見事に裏返った。
「ははは、やっぱり僕の理想だな、君たちは。」
ハートランド様にも笑われて、私は全身真っ赤になった気分だった。
その後、リヒ様と私は豪華なディナーを振る舞ってもらった。
ハートランド様は憑き物が落ちたように晴れ晴れとした顔になって、
色んな事を面白おかしく話してくれた。
会食の席では派閥の話は一切なく、終始ハートランド様がリヒ様にメイドに好かれる方法を聞いていた。
その都度、リヒ様が私に
「マキアはどうされるのが好き?」
とか、
「私のどこが好きなの?」
と話を振ってくるので、
その度にドキドキして食事の味がよくわからなかった。
カーディナルさんは、最後のお見送りの挨拶以外は一言も話すことはなかったが、
目元が優しくなったようにマキアには感じられた。
馬車の中。
さっきからリヒ様が、私を面白そうに見つめている。
その姿は20代前半の美青年。
私の心臓に一番悪い姿だ。
「どうしたの?そんなにむくれた顔して。」
リヒ様はニヤッと笑う。
「むくれていません!」
「あはは、食事の席でちょっと羞恥プレイが過ぎちゃったね。」
リヒ様は怪しく笑う。
「変な言い方しないでください!!」
私はまた顔が赤くなりそうになるのを必死で抑えた。