ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第10章 愛の形
「カーディナル。何か思うところがあるんじゃないかな?」
リヒ様はカーディナルさんにグラスを向けて、ニヤッと笑った。
「……。」
カーディナルさんはポーカーフェイスを崩さず口を開かない。
だか、少しだけ瞳が揺れたようにマキアには見えた。
(…同じメイドだもん…なんとなくなら彼女の言いたい事分かる気がする…)
ハートランド様は、そんなカーディナルさんを固唾を飲んで見つめていた。
言わせるべきか悩んでいるようにも見えた。
もしかしたら聞くのが怖いと思ってるのかもしれない。
「…あぁそうか。君は彼がいいと言った言葉以外は話せないんだったね。」
リヒ様は目を閉じてシャンパンを飲み干した。
「それなら…」
リヒ様はグラスを置くと、イスに背を深く預け足を組んだ。
「マキアが代弁してあげて。」
リヒ様は私を横目でチラッと見た。
「えっ!!」
私はびっくりして声を上げた。
全員の視線が私に注がれる。
「同じメイド同士。気持ちが分かるんじゃないかと思ってね。」
リヒ様は微笑んだ。
「…っ。」
(これは…言えってことですね…。)
「マキアちゃん…教えて?」
私が言いよどんでいると、ハートランド様の切ない眼差しが注がれた。
(その目…心臓に悪いからやめてください…!)
「それでは…その僭越ながら…一言だけ…」
私は大きく息を吸った。
「『私の血も飲んでほしいです』」
「!!!」
ハートランド様はカーディナルさんを見つめた。
カーディナルさんはわずかに目を伏せたように見えた。
「…これは私の推測なのですが…」
私はカーディナルさんを見た。
「カーディナルさんは、ご存知の通り髪も肌もとても綺麗です。
ほっそりとされていますが、けして病的な痩せ方をしているのではないはずです。
肌が白いのも日焼けをしないように気をつけているからだと思います。
血色も良く、爪にも艶があります。」
私はカーディナルさんから感じた身体的特徴を上げていく。
「それはつまり、体調管理をしっかりされていて、
健康維持に努めていらっしゃるという事です。」
リヒ様は指を組んで膝の上に乗せた。
口角が上がっている。