第10章 　愛の形

「そんな彼女に、マキアちゃんのチャームを打ち破る程の忠誠心が加われば、
どんなに素敵な事だろう…。」


「！」


不意にハートランド様と目が合い、私はドキッとしてしまう。


「僕は君が羨ましかったんだよ、伯爵。
そんなにもメイドに慕われている君が。」


「…そう。」


リヒ様はそれだけ言ってカーディナルさんを見た。
カーディナルさんもリヒ様を見つめて、うっすらと目を細めた。


「君の言う通り、私はマキアに慕われていると自負しているよ。」


リヒ様は私の方を見てウィンクした。


「っ！」


反則…。悔しい…。


「そして私も、マキアの事は大好きだよ。」


「ふえっ！」


私は驚いて変な声を出してしまった。
リヒ様は吹き出してクスクスと笑った。


「マキアの血は君のドール達のように、僕にとっては最高なんだ。」


私は顔を真っ赤にしてうつむいた。
（こんな場所で言わなくても…！）


「カーディナルの血はどうなの？」


リヒ様はハートランド様を上目遣いで見た。


「…僕は彼女の血を絶対に吸わない。」


ハートランド様はとんでもないとでも言うように、目を見開いて否定した。


「彼女の体に傷を付けるなんて出来ないよ。
だからドールを二人も側に置いているんだ。」


ハートランド様はまたカーディナルさんを切なそうに見つめる。


「社交界に勤しんでいるのも、彼女のため？」


リヒ様は頬杖を付いてクスッと笑い、ハートランド様をみつめた。


「…そうだよ…。そこで“ストレス”を“発散”しているんだ。
“それ以外”で他の女性になんて興味はない。」


ハートランド様はうっすらと頬を染めた。


「クスっ。“社交界の華”は思っていたよりも純情なようだ。」


リヒ様はとても楽しそうだ。
その様子は思春期の弟の話を聞くお兄さんのようだった。