ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第10章 愛の形
「どうして…」
ハートランド様は小さくつぶやく。
「どうしてもなにも、その反応を見れば分かるだろう。
私に取られてしまうかもと焦った?」
リヒ様はクスっと笑う。
「…ああ。」
ハートランド様はカーディナルさんを切なそうに見つめる。
私はその眼差しに不覚にもキュンとしてしまった。
「君にとって彼女は特別な存在なんだね。」
リヒ様の声がなんだか優しい。
ハートランド様の頬にさっと朱がさした。
リヒ様の言葉は子供を慈しむような優しさを含んでいた。
「それで?君の本当の目的を聞こうか。」
リヒ様はテディが持って来てくれたグラスに自らシャンパンを注ぎ、口に運んだ。
そこには先ほどの恐ろしさは消え失せ、なんだか楽しそうだ。
「……。」
カーディナルさんは心配そうに見つめている。
「恥ずかしくて言えない?」
リヒ様はクスッと笑った。
「じゃあカーディナルに聞いてみようかな?」
「!!」
リヒ様がカーディナルさんを見つめると、
ハートランド様が焦って顔を上げた。
「カーディナルは僕がいいと言った言葉以外しゃべらないよ。」
ハートランド様もシャンパンを一口飲むと、話し始める。
「伯爵の言う通り、カーディナルは僕にって特別な存在だよ。
彼女は僕の理想の女性像なんだよ。」
ハートランド様はリヒ様を真っ直ぐ見つめて言い放った。
「彼女のこの美しさ、儚さ、清楚さ、高潔さ。
外見の美しさも、物腰の美しさも、声の美しさも
どれをとっても僕にとっては最高なんだ。」
確かにカーディナルさんは同性の私から見ても見惚れてしまう美しさがあった。
それは呪術師のエロイーズ様や、リヒ様のお母様の様な艶やかさとはまた別の静的な美しさだった。
「そんな彼女を僕だけのメイドとして側に置ける事は、なんと幸せな事か…」
ハートランド様はカーディナルさんの指先を握る。
カーディナルさんは静かに聞いている。
その表情は何を思っているのか私には分からなかったが、
ハートランド様の全てを受け入れているような眼差しだった。
私はそんな二人を見て素直に羨ましく思った。
あんなにも主人に思ってもらえるなんて…。