ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第9章 社交界の華
「おやっ、もう気づいていたのかい。」
ハートランド様はにっこりと笑った。
「もしかしたらと思っていたけど、近くで見て確信したよ。
生気のない目、血の気のない白い肌、そして何より首筋の傷跡…
治る間もない程の頻度で食しているのか、治す力を使う気もない〝ドール〟なのか…」
リヒ様は嘲笑うような目をハートランド様へ向ける。
〝ドール〟それは〝ブラッディ・ドール(血の人形)〟のこと。
すなわち食用。
血を定期的に吸うために近くに置く人間のことだ。
鮮度と栄養価から若い人間が多いが、ここまで若いドールはあまりいない。
なぜなら〝もたない〟からだ。
子供の体積から量も少ないし、身体の耐久性も低い。
だから二人いるのか…。
まだこんな小さい子をドールにするなんて…。
マキアは二人の身体が心配になった。
「傷を残したのはワザとだよ。
君も感じているんだろう?彼女たちの甘い血の匂いを。
ね?極上だろう?この子達は稀に見るブラッディ・ドールだよ。
僕が精力的に活動できるのはこの子達のお陰なんだよ。
もう好きで好きでたまらないんだ。」
ハートランド様は二人を見ながら満面の笑みを浮かべる。
「テディベアとビスクドールか…悪趣味だね。」
リヒ様は鼻で笑った。
「可愛いだろ?この子達は孤児だったんだ。だから僕が名前をつけた。
かわいそうに、路地裏に捨てられて二人でうずくまっていたんだよ。
だから僕が屋敷に招いたんだ。もともと器量が良いからね。
可愛く装わせて、とても大事にしているよ。」
ハートランド様は嬉しそうに話す。
「ふん…慈善事業気取りか?」
「気取りじゃない、立派な慈善事業さ。
ここで、なに不自由なく過ごしいるんだよ。
彼女たちも路地裏にいて死を待つより幸せだろ?」
「血を吸われ、調教されることが自由とでも?」
「調教じゃないよ、躾だよ。
レディとしてのマナーは大切だからね。」
ハートランド様の笑顔はやはり太陽のように美しかった。
それが余計に恐ろしかった。