ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第9章 社交界の華
「やぁ!リヒテンシュタイン伯爵。我が屋敷へようこそ!」
「!!」
中から勢いよくハートランド様が現れて、
笑顔で出迎えてくれた。
「お初にお目にかかるかな?
こうして会うことができて、僕はとても嬉しいよ!」
ハートランド様は艶やかな蜂蜜色の髪を輝かせ、
両手を広げて歓迎する。
イケメンオーラでキラキラしている。
「『お招きいただき感謝する』と一応謝辞を述べておこうかな。」
リヒ様は少し面倒な様子で、ハートランド様のキラキラオーラを避けた。
「あはは、ジョークがお好きなんだね。
いいよ。僕はユーモアのあるドラキュラは大好きだ。」
ハートランド様は太陽のように笑う。
びっくりするほどリヒ様の嫌味が通じていないようだ。
ハートランド様のエメラルドのような美しい瞳は切れ長で、その長身からはクールな印象を受けるが、笑顔と立ち振る舞いは真逆でとても人懐こい。
その印象は、まさにギャップ萌えというやつかもしれない。
「あんな脅迫状を送ってくるなんてどんな奴かと思っていたけど、想像より頭の悪そうなオトコで安心したよ。
それとも人心掌握のために、あえて道化を演じているのかな?」
リヒ様は目を細めて口角を上げた。
早々に核心を突くリヒ様に、マキアは内心ヒヤッとした。
前日に手紙件は聞かされていた。
内容は見せてもらっていないが〝脅迫状が送られてきたんだよね~〟とリヒ様はどうでも良さげにつぶやいていた。
「やだなぁ伯爵!僕はユーモアが好きだと言っただろう?あんなのジョークじゃないか。
真摯に受け止めてくれた君の気持ちは嬉しいけどね。
だから君のかわいい小鳥も連れてきてくれたのだろう?」
ハートランド様は右手を腰に当て、左手を胸に当ててポーズを作り、満足そうに微笑んだ。
「!!」
視線を合わせられたマキアはハッとした。
ハートランド様に圧倒されてタイミングを逃してしまった。
「ご、ご挨拶が遅れまして大変申し訳ございません!
お初にお目にかかります。
私はリヒテンシュタイン様付きのメイド、
マキアと申し…」
「うんうん!知ってるよマキアちゃん。
堅苦しい挨拶はなしだよ。」
ハートランド様はメイドの私にも輝く笑顔で接してくれた。
メイドに対してこんなに優しく接してくれる人は珍しい。