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ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜

第9章  社交界の華



「な、何ですか?さっきから私のこと見てますよね?
まだからかうおつもりですか?」


マキアは頬を膨らまして私を睨み、両手を腰に当てた。
その様子がなんとも可愛らしい。


「ううん、今日もマキアは可愛いなって思ってただけだよ。」


「!!」


にっこり笑うとマキアは真っ赤になって、
もう。とか、また…。とかブツブツ言いながら掃除に戻って行った。







今日はリヒ様と久しぶりのおでかけ。

揺れる馬車の中で、二人は向かい合って座っている。
私は緊張で、スカートの裾を軽く握っていた。


「緊張してるの?」


リヒ様は頬づえをついて外を眺めていたが、
視線だけマキアに向けてクスッと笑った。


「は…ハイ…。
ハートランド様のお屋敷に行くなんて、
初めてで緊張します…。」


メイドが他のドラキュラ様の屋敷に行くなんて、とても珍しいことだった。
しかもハートランド様のお屋敷。
メイド達の中でも有名なお人だ。
ディクシー派の方であることから、リヒ様も、もちろん私も全く接点はなかったが、彼の噂は有名だった。

社交界の華。
超絶イケメン。
ハーレム王子。
マダムキラー。
etc…

彼の通り名は多く、どれも華々しい。
学校のクラスメイト達も一度は会ってみたいと夢見ている。
会ったことのある子は、どれだけカッコ良かったかを自慢げに話し、周りの子は目を輝かせて聞いていた。


「…そんなに社交界の華に会えるのが楽しみ?」


リヒ様は体をこちらに向け、首をやや傾けて聞いてきた。
その目は何を思っているのかわからない。


「い、いえ。…素直に興味はありますが…
少し怖いです…。」


マキアは正直に答えた。
リヒ様がちょっと苛立ってるような気がしたからだ。
なんだか危険な感じがする。


「…そう。」


マキアの答えに満足したのか、リヒ様は優しく笑って目を閉じた。

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