ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第8章 妬きもち
「私は期待していたのにな。」
リヒ様は眉間にシワを寄せて、小さなため息をついた。
「え…?」
マキアがきょとんとしてを見つめていると、
リヒ様はマキアの両の手首を、右手で一纏めにし、
頭の上で縫い止めた。
「っ!」
マキアは一瞬の出来事に目を見開いて、息を詰めた。
急に腕を上げられ、胸を張るような形になる。
「ねぇ…マキアは、
私が他の女性に心を奪われてしまっても、
いいの?」
ぐっと間合いを詰めて、リヒ様は問いかける。
リヒ様の髪がサラサラと落ち、マキアの頬をくすぐった。
「り…リヒ様…」
ひどい…なんて質問…
そんなの素直に答えられるわけないのに…
「リヒ様の…御心のままに…
主人の恋路に…メイド風情が口を出すこと…など、
っ!!」
マキアの言葉を遮るように、リヒ様はマキアの首筋に舌を這わせた。
マキアの体がビクっと跳ねる。
「マキア。そんな教科書に載ってるような言葉、
私は求めてないよ。」
リヒ様の声は怒りを含んだような、低い声だった。
「リヒ様…あのっ……んっ!!」
リヒ様の唇は、首筋に添って耳元へと上がっていく。
「ほら、素直に話して」
耳元で、吐息を含んだ美声が響く。
それは脳へと直接流れ込み、麻痺させてしまうような甘さを含んでいた。
「いっ…言えませんっ……あっっ!」
マキアが必死に拒否をすると、
耳たぶを甘噛みされ、思わず声を上げてしまった。
全身が甘さに痺れて震える。
「強情な子だね…。
私の命令が聞けないの…?」
「っ!!」
本当にひどい。
“命令”を出すなんて。いじわるだ。
それは従わざるを得ない、絶対服従の合図だった。