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ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜

第8章  妬きもち



 リヒ様はゆっくりとマキアに近づく。
マキアはソファーの前ギリギリにまで追い詰められた。


「あっ…」


マキアはこれから起こる事が予想できず、
リヒ様の目にくぎづけになる。


「り、リヒ様、いったいなにを…っ」


リヒ様はそんなマキアの様子に笑い、
マキアの流れる髪を、そっと耳にかけた。


「ん…っ」


リヒ様の指が耳に触れ、マキアはびくっと震える。


「あれ?もう顔が赤いけど…やっぱりまだ媚薬がぬけてない?」


リヒ様は楽しそうに目を細めて、
マキアの頬を撫でた。
リヒ様の挑発的な笑みに、
マキアの心臓はどんどん早くなる。

からかってるだけなのに、悔しい…
リヒ様が色っぽくてどうしようもない。


「そんな目で見つめないでよ、マキア。
…誘ってるの…?」


紫水晶の瞳が光り、
リヒ様の唇が近づく。


「えっ…!な、ちがっ…!」


マキアは真っ赤になって後ずさる。


「リヒ様……。あっ、きゃあーー!」


マキアは後ろのソファーにつまづいた。
瞬間、リヒ様はマキアの後頭部を右手で支え、
頭を打たないようにしてくれた。
しっかりとした、男の人の指と手。
マキアの頭はすっぽりと包まれ、
二人でソファーに倒れこんだ。


「…あはは。マキアは本当に可愛いね。」


リヒ様は美しい笑顔でクスクスと笑う。
仰向けのマキアがゆっくりと目を開けると、
目の前には大人になったリヒ様の美しい顔があった。

まるで押し倒されているような状況に、
全身が甘い炭酸水に包まれたように弾けた。


「ひ、ひぁ…!!り、リヒ様近い…です…!!」


リヒ様の身体とソファに挟まれ、
体温が一気に上昇する。

リヒ様と自分の間にはまだ空間があり、
密着していないことが、逆に恥ずかしい。


(何これ…床ドン的な…?!)


二人の空間を支えているのは、リヒ様の長くしなやかな腕だった。
至近距離で見つめられ、ふわりとリヒ様の香りがする。


(む…ムリッ…!もう心臓が…もたない…!!)

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