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ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜

第7章  媚薬



「も…もっ申し訳ございませんっ!!」



マキアは涙目になりながら慌てて割れたグラスを手に取ろうとする。


「待って。指を切る。」


リヒ様は溜息をつくと、パチンと指を鳴らした。

すぐに割れたグラスは元通りになり、
マキアの持つトレイの上に収まった。


「マキアはホントによく割るね。」


リヒ様は少し呆れたように笑った。


「ほ、本当に申し訳ございませんでした…!!」


マキアはまだ動揺が治まらず、顔も真っ赤だ。
心臓の音が耳に響く。


「お、お邪魔してしまい…申し訳…」


涙目になりそうなのを必死に堪える。


(どうしよう、大変なところに居合わせてしまった…!
い、今、キ…キスしようとしてたよね…?
絶対そうだよね?!
しかもリヒ様の方から…!!
どうしよう、なんか…泣きそう…。
メイド風情が、主人の色恋沙汰に私情を挟む余地なんてあるわけない。
わかってるけど、でも…)


「マキア。何考えてるの?」


リヒ様は泣きそうになってるマキアの顔を
怪訝な様子で見つめた。


「!!」


「エロイーズは喉が乾いたんだってさ。」


リヒ様はケロっとしてウィンクした。


「えっ…!あっはい!」


マキアは慌てて二人の側まで来ると、
グラスを置き丁寧にワインを注いだ。

真っ赤なワインが注がれるまで、エロイーズはマキアを見つめていた。


(ひぃー!…なんか視線が突き刺さる。緊張でまた落としそう…。)


「し、失礼いたします。」


なんとか注ぎ終わりマキアは退室しようとした。


「待って。マキアはココ。」


リヒ様は、エロイーズ様が横たわる逆側のソファを指した。


「えっ」


マキアは固まった。


「ワイン注ぐ係」


リヒ様は上目遣いでマキアを見つめる。


(か…かわいい)


「はいっ!」


心の中でそんな事を思うと、不思議と元気な声が出た。

その様子を、エロイーズ様は猫のような鋭い目で見ていた。


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