ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第7章 媚薬
深夜、屋敷の扉がゆっくりと開き、
美しい毛皮のコートに身を包んだ美女が現れた。
「お招きいただきありがとう♡
まさか貴方からご招待いただけるなんて思わなかったわ、
リヒテンシュタイン様♡」
エロイーズ様は、太ももあたりまで深いスリットが入った、漆黒のドレスで現われた。
「呼ばなくても来るだろうからね。
来る時間がわかっている方がいいだろう?」
リヒ様はソファーにひじをついて、悠然と脚を組んだ。
その姿は子供だが、あどけない雰囲気は息を潜め、
目は不敵に笑んでいる。
「まぁ♡サプライズはお嫌いでしたかしら♡
でも、おもてなしされるのも大好きよ♡」
エロイーズ様は棘のある言葉など軽く受け流し、
にっこりと笑った。
柔らかくアップにまとめられた薄紫の髪は華やかで、
うなじに掛かる後れ毛がなんとも色っぽい。
白い陶器のような滑らかな肌に、濃いピンク色の唇がとても映える。
甘い香水の香りにも、マキアはぽーっとしてしまった。
「あらっ、メイドさん。私のコートを預かってくださらないの?」
エロイーズ様は少し呆れたような嘲笑を浮かべ、コートを肩まで落とした。
「も、申し訳ございません!お預かり致します!」
マキアは慌てて駆け寄り、コートを預かる。
滑らかな白い腕が露わになり、マキアはドキドキした。
近くに寄ると香水の香りが一層強くなり、
マキアはぼーっとなるのを必死に抑えていた。
「エロイーズ。“また”この香りとは、少々芸がないのでは?」
リヒ様は冷めた目で、唇の端だけ上げて言った。
「あらっ♡もう私の香りを覚えてくれたの?
嬉しいわリヒテンシュタイン様♡」
マキアは預かったコートから漂う香りにもクラクラして、顔が熱くなるのを感じていた。
エロイーズ様が美しくて、妖艶でドキドキしてしまう。
艶やかでぷっくりとした桃のような唇、たわわな果実の様な豊満な胸。
ぐっとくびれて曲線を描く腰に…
「マキア。早くコートを置いておいで。その香りは媚薬だよ。」
エロイーズ様を熱っぽい視線で凝視していたマキアに、リヒ様は低く声をかけた。
「…はっハイ!び、媚薬…っ!し失礼いたします!」
マキアはビクッとして、慌てて部屋を出た。