ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第1章 ドラキュラ主人とメイドの日常
私はマキア16歳。
リヒテン・シュタイン様のメイドです。
この御方はこう見えて、去る王家の血筋を引く御方でして、
現代に生きるドラキュラ伯爵様でなのでございます。
もちろん秘密は吸血鬼であること。
「ホントマキアはかわいいなあ~♥」
リヒ様はクスクス笑った。
切長で美しい瞳に、
笑いすぎて涙の泉が沸いてた。
涙は紫水晶の瞳を包み、
艶やかな光を放つ。
端に貯まった涙がこぼれ落ちるかと思ったが、
縁取る銀色の睫が受け止めた。
マキアはその様子を興味深げに観察し、
見惚れていた。
「マキア、そんなに見つめられたら私は困ってしまうよ」
リヒ様はまたクスクスと笑い目を細めたので、
私はハッと気が付いた。
「…なっハァ!?何いってんですか。
そーゆーのを自意識過剰ってゆーんですよ!」
私は真っ赤な顔を見られたくなかったので、
フンッと横を向いた。
「ジイシキカジョ?」
リヒ様は子どもの様に目をまんまるにし、
小首をかしげて私を見つめた。
「自意識過剰です!たいしたことないのに、
自分は凄いとか美しいとか勘違いしてる、
ナルシストのことですよ!」
私はワンポイントアドバイスをする先生の様に、
右手の人指し指を立てて、
左手を腰にあててわざと偉そうに言った。
「あぁナルシストのことねー」
リヒ様は日本語より外国語の方がお得意だ。
生まれなのか育ちなのか。
英語で言うと伝わることがある。
でも私は英語が苦手だから、あんまり伝わらない(汗)
「それなら私はジイシキカジョではない。
勘違いなどしていない。
事実、私は素晴らしくて美しい。」
リヒ様は黒のマントをバサッと翻すと、
赤い唇に爪の長い人指し指を当ててにっこり微笑んだ。
いつのまにか子供の姿から、
10代半ばくらいの美少年の姿に変わっていた。
その蠱惑的な笑顔は、見る者の心を魅了する。
マントを翻した風で髪がサラサラと揺れ、
その銀髪に月光が輝き、細かく乱反射した。
キラキラして綺麗だ。
「ホラ…ね。」
リヒ様はうっとりしている私を見て、
満足そうに微笑んだ。
「さて、おはようのキスは?」
甘い美声で囁くと、
マキアの腕を右手でひとまとめにし、
左手は顎に添えて上向かせた。