ドラキュラさまの好きなモノ〜主人とメイドの恋煩い〜
第4章 色男なパパと艶女なママ
「はぁ~あ、そっか。」
重苦しい空気が、一気に解けた。
アレイン様はゲームに負けた子供のように両手を軽く上げて、
ソファーにもたれ掛かった。
「ね?だから言ったでしょう?
この子はどっちにも付かないって。」
ローズレット様は苦笑して、ワインに口を付けた。
「まぁあんまり期待はしていなかったけどね。
ちょっとはパパに憧れちゃったりしてるカナって思ってね。」
リヒ様は冷ややかに鼻で笑った。
「お前は、ネル派であるシュタイン家の嫡子だけど、
永久中立とか宣言してるからさ。
パパ達、ネル派の人達の中で肩身狭いんだよ。
お前の息子はどーなってんだって。
余計なお世話だけどね。」
アレイン様は飄々としていた。
どうしてもリヒ様をネル派に入れたい、
という訳ではないらしい。
「私たちが今日来たのはね。
一応カワイイ息子に忠告をしに来たのよ♥」
ローズレット様は、グラスを置いてウィンクをした。
「リヒ、これからお前の周りには、
この気に乗じて勢力拡大を狙うディクシー派からの勧誘と、
大きな穴を埋めようとするネル派からの勧誘が来るだろう。」
アレイン様の口調は真面目だ。
「“お誘い”のうちはいいけどね。
シビレを切らした男女がする事は、始末に負えないからね。
お前が“永久中立”を貫きたいなら、それもいい。
けど、それ相応の覚悟をしておくんだよ。」
「“遠路遥々、ご忠告どうも”と
言っておきましょう。今は。」
リヒ様は右手でひじを付き、目を細めた。
その目には強い意思が感じられ、
横にいたマキアはちょっとキュンとしてしまった。