第6章 in THE LIBRARY
「……ありがとね。また俺、仕事頼まれちゃってさ……」
「大変ですね、人望のある方というのも……」
彼は笑いながら言いました。
「なにそれ、俺が人望あるみたいな言い方。俺だったら何でも‘‘いい”って言うだろうって思ってるんだよ、みんな」
「雪ノ下先輩、お人好しですもんね」
彼が笑いながら言うから、私の言葉にも若干の笑いが含まれてきたような気がします。
「そう?よく言われるんだけど、自覚ないんだよな……」
「自分のことは、自分ではよく分からないものですよね」
彼が話しかけてきて、私が答える。
特に話が盛り上がる訳でもない、淡々とした会話なのに、何処か楽しさがあるように感じてなりません。
…そういえば、最近雪ノ下先輩と話してなかった。
帰りの時間は特別に合わせている訳ではないからバラバラで、朝に一緒になることはもともと多くありませんでした。
そもそも、一緒に帰ることが出来たのが偶然の出来事だったのかもしれません。
一緒に帰るといっても、あまり多くの言葉を交わすことはなかった私達は、さほど親しくはなってないかと思います。
そんなに親しくはないはずなのに、何故か話していると落ち着くというのは、本当に不思議以外の何物でもありません。
そして、落ち着いていたと思っても、ふとした瞬間にドキリとするのは、何なのでしょう。
「まあ、自分のことは分からないよな……伏見サンって俺のことどう思ってるの?」
今何故か、ドキリとしました。男性に慣れていないからでしょうか。いえ、私は彼とはいくらか話したので、慣れていない訳ではありません。
本当に、不思議ですね。