第6章 そういうの柄じゃないので(花巻貴大)
公園を出て駅前通りを進み、寂れた商店街を抜けて線路沿いへ。
すると、そこは既にホテル街。
休憩 2,600円〜
DVD貸出多数!
やたら煌びやかなネオンの中にそんな文字が躍る。毛ほども臆せず、ホテルのひとつへと入っていく彼女。
「ねえ、どの部屋がいい?」
「何でもいい。あ、やっぱここ」
「ローションマット付きとか」
花巻って、そういうのがお好み?
部屋選択のボタンを押下しながら彼女が問うから、俺はその肩を抱いてこう答える。
「パイズリが夢なんですけども」
半分本気の冗談でそう言ったら、脇腹に鋭いエルボーが飛んできた。
「それ、私の胸じゃ無理って分かってて言ってるよね?」
「いや、あの、ほんとスンマセン。でもほら、スレンダーな子も好きよ俺」
適当に過ぎていく時間。
適当な恋人ごっこ。
心地いい、そう思う。
痛い痛いと泣き叫ぶ心が、少しずつ穏やかになっていくような。そんな感じ。