第1章 I (can not) see you.(及川徹)
「もう出よっか」
臆病な自分から目を背けたくてそう言った。キスで惚けてとろんとしている彼女をお姫様抱っこして、バスルームを後にする。
「挿れたくなっちゃった」
とか、なんとかって。
おどけて言葉を足したら、困ったような微笑で返された。
「──ばか」
照れたように染まる頰が、愛しくて愛しくてたまらないのに。愛しいだなんて、言えなくて。
ドサッと音がして羽毛が沈んだ。
軋む、ベッドのスプリング。
なだらかな白山のなかに映ゆる桃色を食むと、華奢な腰が小さく跳ねた。
舌先を輪に沿わせて舐り、留守になっている手で反対の乳房を弄ぶ。
「あっ、ん、……徹」
艶やかな声に名前を呼ばれた。
俺のことを呼びながら髪を撫でてくれる手が好きだ。慈しむような、その仕草が好き。
もっとしてほしくて鼻先を擦り寄らせると、呼応するようにして髪を梳いてくれる。