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(R18) ドリップ・ポルノ (HQ)

第1章  I (can not) see you.(及川徹)




「さすがの及川徹だってひどく傷ついたら死んじゃうかもよ?」



「網翅目最速の節足動物よりしぶとそうなのに?」



「誰 が ゴ キ ブ リ だ コ ラ」






 あら失礼徹はゴリラだったわね、だとか。その生意気な口黙らせてやるから覚悟しな、だとか。



 肌を寄せあったまま戯れついて、くだらない冗談を言いあって。そうしてただ流れていくだけの他愛ない時間に、ふと、沈黙が訪れる。



 僅かな一瞬に切り替わる空気。


 互いを見つめたまま少しずつ吐息が重なって、俺たちは、どちらからともなくキスをした。





「っん、ぅ」





 深いところを侵せば、たちまち甘やかな声が零れだす。きもちいい、と呼ぶにはまだ刺激が足りないけれど、すごく心地好い。

 キスだけでこんなに心満たされるんだから、恋ってすごいと思う。



 なのに、どうしてだろ。
 同じくらい苦しいんだ。



 唇を交わすたびに、愛しさが募って胸が苦しくなる。

 息がしやすかったはずの彼女の隣。
 あの日聞けなかった薬指の小さな痣が、ジワリ、ジワリと、俺の首を絞めていく。



 息が、──できない。





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