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(R18) ドリップ・ポルノ (HQ)

第6章  そういうの柄じゃないので(花巻貴大)



 何もかも、どうでもよかった。

 そんな風に自暴自棄を起こしていないと、まっすぐ前を見て歩くことすらできない気がしてた。

 家に、着いて。
 鼻先をくすぐった飯の匂いにすら嫌気が差して。

 とりあえずシャワー浴びて自室に籠もってたら、フライパン+木ベラの重装備で特攻してきた母に「貴大! 片付かないからご飯食べちゃいなさい!」って怒られる。


「俺、今日食欲な「あらやだ風邪!?」

「……や、違えけど「ああ恋患いね?」


 んんん母ちゃん。

 そこはそっとしといてくれよ。
 息子ビックリだわ、マジで。

 どんだけ勘が鋭いんだか、さすが女は怖えというべきか。男子高校生の微妙かつ繊細なハートの機微なんて、母にとってはどうでもいいことらしい。

 哀しきかな、俺の青春。

 台所事情に完敗した俺は、母に踏み荒らされた失恋の痛みを引きずりつつ飯を食う。

 味なんて、ほとんどしない。
 まさにアレだ。砂を噛むってやつ。

 俺の対面に腰かけていた母が、垂れ流されてるバラエティ番組を観て笑う。この人面白いわねえ、って、最近売れてる芸人を見やりながら。

 俺は顔を上げることができず、ただ下を向いていた。左手に持った味噌汁のお椀が、やたらに重かった。

 ズキリ ズキリ
 胃のあたりが痛くてたまらない。

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