第6章 そういうの柄じゃないので(花巻貴大)
どうしようもなくイライラしていた。
誰にぶつければいいのか分からない怒りが、延々腹のなかで煮えくりかえってる感じ。
ここんとこ、毎日こうだ。
教室で椿に聞かされる及川のこと。それが惚気であっても相談であっても、何もかもが苛立ちの種。
でも俺は椿の友達だし、いや、そう思ってるのはあいつだけだけど。
加えて俺は及川の友達でもあるワケだから、あいつらの板挟みになるのは至極当然のことなのである。
まったく、解せない。
「花巻、お前どうする」
「あ? ワリィ聞いてなかった、何」
「ラーメン。いつもんとこ」
「あー、ごめん、俺今日もパスで」
岩泉からの誘いを断るのもいい加減忍びない。けど、馬鹿話しながらラーメンって気にもどうしてもなれない。
肩を落として、嘆息。
パタンと力無くロッカーを閉める。
全部見透かしたような顔でこっちを見る松川に(聞くな頼む)って目配せして、俺は下校の途に就くのだった。