第6章 そういうの柄じゃないので(花巻貴大)
こんな世界消えちまえと願うことがある。所謂ひとつの破滅願望ってやつだ。
とはいえ、俺が願うのは人間の歴史そのものの存在意義を問うような「終末論」的なそれではなくて。
要は、あれだ。
リア充爆ぜろってのとよく似てる。
「クソ川ー、彼女が呼んでんぞー」
「んもう岩ちゃんてば! いい加減そのクソ川ってのやめてくれる!?」
「いいからとっとと行けよウンコ川」
「あのね松っつん、ちょっと可愛く言い換えたところで意味はおんなじだからね!?」
ようやく部活を終えた午後八時。
疲れた身体に鞭打って着替えるロッカールームに、同級生たちの野次が舞っていた。
野次の矛先は、こいつ。
及川徹だ。
チームメイトで、主将で、友達で、ついでに俺の片想いの相手と最近恋人同士になりやがった及川徹。
散々野次られて弄られて、及川がフグみてえに頰を膨らませたところで、なぜか俺のスマホにメッセージの通知。
▼瀧田 椿
外超寒い! 凍っちゃう!
徹に早くしろって伝えてー!
消し飛んでしまえ、と思う。