第5章 愛玩(及川徹の場合)
彼の嫌いなモノも知った。
高速で飛んでくる系の虫。むやみやたらにクラクションを鳴らすひと。自分の愛する人を傷つけるような悪口。
とある、ネットニュースで。
惨敗した龍神日本が批難の対象になったことがあった。
決定打に欠けると、名指しされたのが木兎選手。及川さんは、ひどく怒っていた。
チームメイトが悪く言われるのは我慢ならないと、顔を歪ませていたのだ。自分が散々なことを書かれたときは飄々としていたのに。
例の、甚く美しい笑みを浮かばせる彼。笑っているはずなのに、まるで、泣いているみたいな。
その笑みを見たときだ。
私は、明確に自覚した。
彼を想うこの気持ちは、恋なのだと。
それからは葛藤の日々。
ペットとして彼に触れられるたび、胸が張り裂けてしまいそうだった。
もっと触れてほしい。
頭を撫でるだけじゃなくて、もっと、その先も。
そう願うあまり溜まっていったのは劣情。彼を好きだと思えば思うほど、切ない寂しさが募っていく。
そんなときに再会したのが、元恋人のタクヤだったのだ。