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(R18) ドリップ・ポルノ (HQ)

第5章  愛玩(及川徹の場合)



 ……──好きなのだと叫んでしまえれば、楽に、なれるだろうか。

 少し歪んでいるけれど、優しい彼。
 私は、及川さんに心を寄せている。

 好き、なのだ。
 どうしようもなく。

 最初はただただ、彼の肩書きに驚くだけだった。テレビや雑誌に出ている彼を見るたび、眼前にいる彼と見比べて唖然としていた。

 コートに立つ姿。
 鮮赤のユニフォーム。

 録画された試合を初めて観たときなんて『今ボールに触ったのが及川さんですか? 本当に?』と本人に質問したくらいだ。

『何当たり前のこと聞いてんのサ。こんな絶妙なトス、俺以外が上げられるワケないでしょ?』私が聞いたのは、そういう意味ではなかったのだけれど。


 一緒にいるうち、少しずつ、見えてきた彼の内面。


 ああ見えて実はお茶目で。
 あとすごく負けず嫌い、すごく。

 それから好きな食べものは牛乳パンだとか、本当はワインじゃなくてビールが好き、だとか。

 世間のイメージを壊さないように生きるのは「ほんと、大変」これが彼の口癖。

 過ぎし日のことも教えてくれた。
 出身地のこと、地元を想う深い愛。

 色んな彼を知った。

 世論で語られている有名人としての彼ではなくて、本当の彼、及川徹を。

 高校時代の友人と電話で談笑している彼を見たとき、ああ、このひとこんな顔もするんだって。

 そう思ったことを、よく覚えてる。
 少年の面影を残した笑み。

 新しい彼を見つけるたびに、心惹かれていって。

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