第5章 愛玩(及川徹の場合)
「とっとと脚開けよ、ほら」
なかなか命令に従おうとしない私を見て、彼は僅かにだが荒くなった語調で命じた。
一秒、二秒、じりじりと時が過ぎる。
刹那たりとも目を逸らしてはくれない彼。私が自分の言うことを聞くまで、絶対に許しはしないだろう。
もう、従うしかない──
「……っ、……」
少しずつ、少しずつ、脚を開く。
シュルと絹擦れの音がする。シーツの上を滑る足裏が冷たい。それから衣擦れの音も、ベビードールの裾がはだけて。
剥きだしになる太腿。
ショーツが、露わになる。
そこでようやく気づいた。気づいた瞬間、顔が火を噴いたように熱くなる。
オープンフロント、だなんて。
ショーツを脱がなくても行為ができるよう縫製されたそれは、本来であれば秘所を覆っているはずの部分にぽっかりと穴が空いているのだ。
すでに両脚は開かれている。
アルファベットのMを描くようにして寛げた中心がひやり、と外気に触れた。