第5章 愛玩(及川徹の場合)
「っ、でも、及川さんには関係ないじゃないですか……!」
「へえ。それ、どういう意味?」
「だって私、……っ彼女じゃない」
そうなのだ。
私は、彼の恋人でも何でもない。
もちろん妻でもないし、友人や知人ですらない。それ以下だ。人間として扱われてない。
数ヶ月前、軽い気持ちで家出した。
プチ家出、だなんて言って。
何をするでもなく繁華街をフラついていた。チャラついてそうな男にナンパされて、ホテル代出してくれるって言うから付いていった。そしたら、ひどく甚振られて。
SMプレイを強いられた。
傷ついて、怪我までして、でも自業自得だし生きてただけマシかなって、ホテル街でうずくまってて。
そんなとき、彼に出会った。
まずその綺麗な顔に心底驚いて、次にどこかで見たことある顔だなって、清涼飲料水のCMに出てる人だってことに気付いて更に驚いて。
最後に、彼の放った突拍子もないひと言に愕然とした。
『お前、うちの子にならない?』
そうして彼に拾われたのだ。
だから私は、彼の、ペット。
所謂、愛玩動物である。