第5章 愛玩(及川徹の場合)
「タクヤってお前の何なの、彼氏?」
「違、っただの、……友達」
「ふうん。トモダチ、ねえ」
そこで一旦言葉を切った及川さんは音もなく、二歩。滑るようにしてこちらに近づいてくる。
同時に何かを引きずる音が聞こえた。
目を凝らして見ると、それはどうやらダイニング用の椅子らしかった。
重厚感のある造りの、黒檀製なのだと以前、彼が言っていたように思う。
ベッドの足元にあたる位置。
繋がれた私と向かい合うところまで移動した彼は、おもむろに腰を下ろして足を組んだ。
ゆっくり、ゆっくりと、こちらに向けられるスマホの画面。
「 う そ つ き 」
「──……っ!」
そこには、仲睦まじそうに頬を寄せ合う男女が映っていた。
インスタにアップしたいからと言ってタクヤが撮ったものだ。彼は、そう、たしかに私の元カレである。
及川さんに出会う前、彼と私は恋人同士だった。別れたのも、及川さんに出会うよりずっとずっと前のお話。