第5章 愛玩(及川徹の場合)
どうにかして外せないだろうか。
この「悪趣味」な呪縛から逃れる術を探るべく、あたりを見回してみる。そこでまた溜息が漏れた。
ベッドの両脇に、柵。
アメリカ製の高級ベッドに不釣合いのそれは、どうやらアルミで出来ているらしかった。昨日まではこんなものなかったのに。
かなり頑丈に取り付けられているらしく、強めの力で押したり引いたりしてもビクともしない。鎖がジャラジャラと虚しく音を立てるだけだ。
ふと、視線を彷徨わせて。
縦に細長い鏡に焦点を合わせた。
彼の身長に合わせて作られた、特注サイズの姿見。
そこに映った自分を見て、大きく、大きく、嘆息する。
ネグリジェまで着せられていたのだ。
生地のすべてがシースルーの、何もかも透けて見えてしまうやつ。
胸元に桜色の淫輪が透けてしまっているのは、私がブラを身に付けていないから。たしかに付けて寝たはずなのに、いつの間に剥ぎ取られたのだろう。
さらに目を走らせて部屋を見渡すと、あった。ベッドのヘッドボードの上。
私が昨晩着ていたニットのセットアップと一緒に綺麗に畳まれている。その横には私のクラッチバッグと、それから腕時計も。
なのにスマホだけが、ない。