第5章 愛玩(及川徹の場合)
目が覚めると繋がれていた。
たぶん、鎖のようなものだと思う。
シルクのシーツがひんやりとした肌触りを生む、彼のベッドの上。
まだはっきりとしない意識のなか、手探りで下肢を弄り、その「のようなもの」の正体を確かめる。
ジャラリと指先に触れる冷たい物。
ああやっぱり、と思う。
げんなりと落ちるのは肩。
「…………悪趣味」
思わず吐き捨てた、溜息と一緒に。
だって悪趣味なのだ。
私の左足首に嵌められたそれ。足枷だ。鎖付きの、拘束具。ベッドと私をしっかり繋いでいる。
いや、それはまだマシだ。
問題はこっち。
足枷を装飾しているパッションピンクのファー。なんなのこれ。白や黒ならまだしも、なんでパッションピンク。
こんなドギツいの、ディスカウントストアのアダルトコーナーでしか見たことない。18歳未満立入禁止と書かれた暖簾が、脳裏を過ぎる。