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(R18) ドリップ・ポルノ (HQ)

第1章  I (can not) see you.(及川徹)





 お互いに精神状態がよろしくないのは一目瞭然だった。

 興味本位で声を掛けたのが、俺。


『お姉さん、なんだか疲れた顔してるね。良かったら俺に愚痴ってみない?』


 第一声はたしかそんな感じだったと思う。

一杯奢るからさ、なんて格好つけて言ったくせに、結局俺が潰れて彼女にタクシーまで呼んでもらったんだっけ。

 流れに任せて連絡先聞いて、再会したのが数週間後。

 仕事のことで悩んでいたのだと話した彼女は、しかし、左手の薬指に指輪の痣があった。

 嘘が下手だよね、ほんと。
 相当長いこと付けてないとあんな痣にはならないのにサ。

 元既婚者か、それとも、長年連れ添った男がいたのか。



 聞いてみたいという気持ちと、どうでもいいやという気持ちと。



 俺が選択したのは後者で、結局、薬指の痣についてはそのまま聞けずじまい。

 彼女も彼女で俺のことを何も探ろうとはしなかったし、そもそも俺がバレー選手であることを知りもしないみたいだった。



 あの頃の俺はまだメディアへの露出もそこそこだったしね。今はCMとか出まくりだけど。芸能人みたいですねってよく言われるけど。

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