第4章 愛玩(木兎光太郎の場合)
重なる唇は、狂おしいほどに熱い。
思えば今日までよく耐えたと思う。いい歳をした男女が二人、ひとつ屋根の下で過ごしていたというのに。
『セックスは無しよ、いい?』
彼との奇妙な関係がはじまったとき、そう言いつけた自分が脳裏を過って薄笑いが漏れた。
「……っん、ぅ」
キスの合間を埋める声と、どちらからともなく鳴らすリップ音。刹那的に離れた唇に熱い吐息を感じて、彼が興奮していることを知る。
男性の割りには色白なその頰に手を当て、角度を変えて互いを求め合った。
絡んだ舌が離れそうになるたび、離れたくないとばかりにまた絡めとられて、交わる熱。
「っ、は、……椿ちゃん、もっと」
「もっと、何?」
「深いのがいい。もっとちょうだい」
せがまれて、求められて。
彼が欲しただけ舌を差し出して、委ねて、されるがままに愛される。