第4章 愛玩(木兎光太郎の場合)
「あのさ、椿ちゃん」
「なあに?」
「俺、椿ちゃんに頭撫でてもらうのすげえ好きだけど、今日は違うご褒美おねだりしていい?」
違う、ご褒美。
そう問いかける彼の深意を瞬時に理解してしまえるのは、私が、その言葉を心待ちにしていたからなのだろうか。
褒められるのが好きな彼。
録画した試合を観賞する日には、必ずこうして頭を撫でてあげていた。
まだ少し湿った銀髪に触れていたはずの掌が、彼の大きな手に掴まれる。
「もっときもちいいのが欲しい」
捕らえられて。
絡められる、指先。
「椿が欲しいの、お前を抱きたい」
だめ?
小首を傾げてみせてねだる彼の、双眸のゴールド。痛いほどに突き刺さる。
私を見つめる瞳の奥。
黄金色に煌めく蜜のなかに見てとれるのは、明らかな情慾だった。
「……駄目、じゃないよ」
私がそう応えた、直後。
反転する世界。
ぱさ、と床に髪が散る。
それはもちろん彼に押し倒されたからに他ならないのだけれど、せめてベッドに行きたかったと苦笑して、私は静かに目を閉じるのだった。