第4章 愛玩(木兎光太郎の場合)
出来上がったクリームボロネーゼと、彼の好きな炭酸飲料を机に置いてテレビをつける。
録画した番組の一覧から「vs オーストラリア」の文字を見つけ出し、決定ボタンを押したところで彼が戻ってきた。
普段は猛禽類の羽角みたいにセットされた髪を垂らして、その前髪からはぽたぽたと雫を滴らせたまま。
「わ! うまそう!」
濡れた髪もそのままにフォークを握った彼を捕まえて「ご飯はちゃんと髪を拭いてから」と、タオルを奪いとる。
本当に、小さな子どもみたい。
コートに立っているときの凛々しさが嘘のようだと、奇抜な色の髪を拭いてあげながらそんなことを思った。
「──それでは本日のスターティングメンバーをご紹介いたしましょう」
煌々と灯ったテレビから聞こえてくる、実況者とアナウンサーの声。
画面に目を向けるとそこには、まるでそこにいるのが当たり前かのように、彼が映っている。
龍神日本 WS
──木兎光太郎
これが、私の、愛しくて堪らないペットの本来の姿なのだ。