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(R18) ドリップ・ポルノ (HQ)

第4章  愛玩(木兎光太郎の場合)



 玄関先にどたばたと音が響いた。

 重たい物が転がるような、それでいて子どもが懸命に駆けてくるような、そんな音。どうやら彼が帰ってきたらしい。


「椿ちゃん! ただいま!」


 ダイニングで料理中の私を見るなり、顔いっぱいに笑顔を咲かせる彼。

 特徴的な頭髪の銀と黒。
 良くも悪くも大雑把な性格のせいで、肩にかけたエナメルバッグからチームジャージがはみだしている。背に躍る、JAPANの文字。


「この間の試合、観てくれた!?」

「観たわよ、少しだけ」

「えー!? 少しだけ!?」


 彼はスポーツ選手だ。

 全日本代表に選出されるほどの腕前を持っていて、その世界では有名な『黄金世代のひとりが俺!』らしい。

 彼と同世代のプレーヤーは、確かに、大会期間中ともなれば連日メディアを賑わしている強者ばかりだ。

 そう、その中のひとりが彼。
 豪快なスパイクと弾ける笑顔がトレードマークの、──以前ニュースでそう紹介されていた、バレーボール選手。

 そして同時に、私のペットでもある。もちろん彼は人間だけれど、事実、そうなのだ。

 彼はペットで、私はご主人様。


「仕方ないじゃない。仕事が忙しかったのよ、それもすごくね」


 でも、ちゃんと録画してあるから。

 私がそう言葉を足すと、むくれていた顔にパ!と笑顔が戻る。

 じゃあ今から一緒に観よ!
 俺、シャワー浴びてくる!

 だなんて、またどたばたと駆けていく大きな背中を見送って、私は料理を再開するのであった。

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