第3章 ひとはその奇跡を運命と呼ぶ(松川一静)
「あ、……っん、っんん」
突きあげられて揺れる身体。同調して跳ねる声、淫らに、上擦って。
徐々に出入が速くなっていく。
先ほどまで感じていた苦しさは、今はさほど感じない。異物感でしかなかった熱杭の圧迫が、次第に快楽へと変わっていく。
初めてなのにこんなにきもちよくなれるの、きっと、──相手が先輩だから。
「……あっ、んっ、松川、先輩っ」
ほとんど無意識に呼んでいた。
新歓では皆が彼を「一静さん」って呼んでて、それがなんだか、妙に寂しかったことを思い出す。
「おー……久々に聞いたな、それ」
腰の律動を止めないまま松川先輩が笑った。再度こみあげる涙は、やっぱり生理的なものなんかじゃない。
「……っ、ずっと、好きでした」
何でこんなときに、告白なんか。
そう思うのに止められなかった。
堰を切ったように溢れだす。
想いが、言葉が、叶うことが許されなかった「好き」の気持ちが。
「ずっと、……っ先輩のことが」
あの日、最初で最後のキスをしてくれたあなたのことが。
「誰よりも「──好きだったよ、俺も」
言葉が先か、行為が先か。
焦がれつづけた彼のひと言に涙するのと、悦楽に追い立てられて限界を迎えるのは、ほとんど同時だった。