第2章 二度目のハートはささやかな約束と永遠の(黒尾鉄朗)
戯れあって過ごす聖夜。
薬指で、ハートが光る。
気づけばあれからもう四年の月日が経っていた。何もかもが変わった。お互いに、大人になった。
でも変わらないものもある。
今までも、これからも、ずっとずっと変わらないもの。
自宅で祝ったささやかな聖夜は、大切な記憶。鉄朗が奮発してくれた今夜は、ふたりの就職祝いと同棲開始祝いも兼ねた新たな門出。
大学四年生の冬。
今年も変わらず、あなたが居てくれる奇跡。
シャンパンゴールドに染まる街を一望できるホテルの一室、ふかふかのクイーンサイズベッドのうえで、彼と肌寄せあって語るのは将来のこと。
「ちゃんとしたの、って、エンゲージリングでこんなに奮発しちゃってよかったわけ?」
「いいんだよ。結婚指輪はもっとすげえの買ってやるんだから、家中のハンカチかき集めて泣く準備しとけ」
「またそうやってハードル上げるんだから……でも、そうね、楽しみにしてる」
彼と繋いだ手。
薬指で光るのは、四年前とは別のハート。こまどりの卵とおなじ色をしたプレゼント箱が、枕元に転がっている。
あの日の約束を果たした鉄朗が贈ってくれたのは、びっくりするほど高価で、うっとりするほど美しい、オープンハートの婚約指輪だった。
了